2019年8月14日水曜日

原子力推進巡航ミサイル 9M730 ブレヴェストニク ブレヴェスニク 原子力ジェットエンジン, Nuclear Propulsion Cruise Missile 9M730 Burevestnik, Nuclear Jet Engine,

原子力推進巡航ミサイル 9M730 ブレヴェストニク, ブレヴェスニク, 原子力ジェットエンジン, Nuclear Propulsion Cruise Missile 9M730 Burevestnik, Nuclear Jet Engine






Update:2020.09.05




2019年8月ロシアで、原子力推進巡航ミサイル「9M730 ブレヴェストニク」が開発中に原子力事故を起こしたのではないかと話題になっている。本記事では、9M730 ブレヴェストニク 原子力推進巡航ミサイルに関する考察を記す。



    




1.9M730 ブレヴェストニク 原子力巡航ミサイル


9M730 Burevestnik ブレヴェストニク、ブレヴェスニク(NATO CODE:SSC-X-9 Skyfall スカイフォール)(007のタイトルみたいなNATOコードだな…)は、ロシアが開発中の原子力推進巡航ミサイルである。プーチン大統領が2018年3月1日に、様々な新兵器と共に発表したミサイルであり、原子力のエアブリージングエンジンを搭載する。化学推進ではなく原子力推進を行うため、全世界規模の広大な射程距離を持つとされている。







2.冷戦時代のコンセプトがリバイバル


冷戦時代、原子力推進巡航ミサイルは、1950~1960年代に米国で検討された大陸間を横断可能な長距離巡行ミサイルであった。しかしながら、より短時間で目標に到達できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)等の技術の発展により、当時の開発計画は中止となった。

近年、米国は弾道ミサイルを迎撃可能な、弾道ミサイル防衛(MD)の整備を進めており、ロシアはこれに対抗するため複数の対抗手段を模索しており、その答えの一つが、1950~1960年代の米国のコンセプトをリバイバルさせた、ブレヴェストニク巡航ミサイルである。

MDをかいくぐる目的で複数の新兵器開発がロシア国内で実施されており、プーチン大統領が同2018年3月1日発表したアバンガード等の新兵器群と方式は異なるが、目的は同じである。


【プーチン大統領が2018年3月1日に紹介した新兵器に関する関連記事】




なお、ソ連においても、大陸間巡航ミサイルというコンセプトは存在したが、「原子力推進」での開発とはなっていない。ブーリャ(Burya La-350)等の大型化された化学推進ラムジェット巡航ミサイルの開発に留まった。




Burya La-350 ラムジェット大陸間巡航ミサイル


米国でも化学推進の長距離巡航ミサイルは、原子力推進ラムジェットミサイル SLAMを開発していたのと同時期に、ナヴァホ(SM-64 Navaho)ラムジェット巡航ミサイル、スーナク(SM-62 Snark)ターボジェット巡航ミサイルが別の計画として開発を実施していた。これらは、SLAM同様、大陸間横断可能な長距離飛行が可能な性能を目指していた。



SM-64 Navaho ラムジェット巡航ミサイル









3.かつて計画された原子力推進ミサイル:原子力ラムジェットミサイルSLAM


公開情報において、かつての米国では原子力ラムジェットミサイル:SLAMを開発していた。原子力推進の超音速低高度ミサイル:SLAM(Supersonic Low Altitude Missile)は、米国で1955年に構想され、1964年に中止になった開発計画である。



SLAM(Supersonic Low Altitude Missile)



SLAMは、原子力推進のラムジェットエンジンを搭載し、低高度において地上防衛レーダーをかいくぐり、核弾頭を敵地に打ち込むミサイル計画であった。約182,000kmの航続距離が計画され、地球の直径の4.5倍以上を飛行出来る目標性能を掲げていた。しかしながら、この計画は、1950~1960年代のICBMの技術開発により時代遅れの概念となる。また、地上配備の防衛レーダーの発展により、低高度でレーダーを回避するという回避戦略も陳腐化した。

加えてSLAMは、実現性に対する深刻な問題も抱えていた。化学燃料を燃焼するのではなく、空気取入口から取り込んだ空気を加熱(原子炉側としては冷却)することで推進するタイプのラムジェットエンジンを搭載していたが、空気を原子炉に対して直接冷却・熱交換することで、推進ガス(高温空気)を得るため、大量の放射性物質を大気中に放出する仕様であり、これは問題視されていた。

(ただし、ミサイルが高速化されているため、原子炉の熱を受け取って放出される放射化した空気は、一か所に留まることなく、広い範囲に拡散する。このため地上への影響は低レベルであると当時は主張されていた。)

巡航ミサイル用原子力推進ラムジェットエンジン開発としては、「プロジェクトプルート」という計画が進んでいた。アプリケーションとしての応用先・搭載先は、先に述べたSLAMである。1961年と1964年に、米国エネルギー省ネバダ実験場にて2つの原子力推進エンジンが試験されている。

当時のエンジンに対する主な技術的課題は、原子炉小型化とエンジンの耐熱性であり、冶金学と材料工学が実現のボトルネックであった。試験を行っていた「Tory」というコードネームのエンジンは、運転状態において、通常のジェットエンジンで使用される金属を溶かす高温状態となるため、それに耐えうる材料開発が必要で、高温耐性を持つセラミックを含む核燃料、セラミック耐熱材の新規開発が実施されていた。








3-1.原子力ラムジェットエンジンの作動原理




原子力ラムジェットエンジンの概要図と
ローレンスリバモア研究所が見積もったマッハ数と熱交換器の温度例


※混同しないために、この方式はSLAMの方式で、ブレヴェストニク巡航ミサイルの作動原理でないことをまず断っておく。

SLAMは、原子力推進ラムジェットエンジンを使用していた。これは、固体ロケットブースターにて機体を加速させ、エンジンの空気取入口に単に空気が入ってくるだけで、空気を圧縮出来るラム効果が利用できる速度域(実用的には、マッハ1以上)でエンジンを起動させる。これにより、圧縮した空気を取り込み、原子炉との熱交換器で空気を加熱、高温の空気をノズルから膨張させることで、高速ガスに変換し、推力を得ることが出来る。

通常のラムジェットエンジンは、空気と燃料を混ぜて化学燃焼させて高温高圧のガスを得るが、原子力ロケットエンジンは、原子炉から直接空気を熱して高温ガス(空気)を得る。推進装置ではなく、原子炉側を主体とした場合は、この熱交換過程が、原子炉の冷却過程となる。つまり、熱交換のバランスが崩れるとメルトダウンする可能性がある絶妙なバランスの上に成立するエンジン技術である。








4.公開されたブレヴェストニク巡航ミサイルの映像


かつて米国は、ラムジェット式の原子力推進エンジンを開発を試みたが、今回ロシアはジェットエンジン式、即ちターボジェットエンジンやターボファンエンジン型の原子力推進エンジンを開発しようとしている様に見える。それは、公開されているプレヴェストニク巡行ミサイルの映像から判断できる。



ロシアが公開したブレヴェストニク巡航ミサイルの試験映像








4.公開されたブレヴェストニクは、ステルス性を意識した亜音速巡航の原子力ジェットエンジンミサイルか?


先に紹介したSLAMの様にラムジェットエンジン搭載の機体は、超音速飛行が前提であり、衝撃波発生を想定しているために機体先端やエンジンの空気取り入れ口は鋭角になっている事が多い。しかしながら、公開された映像を見ると、ブレヴェストニク巡行ミサイルのノーズ部分は、その様な形状にはなっていない。



ブレヴェストニク巡航ミサイルと各国の亜音速巡航ミサイルの先端部比較
ステルス性を考慮した亜音速ミサイルである様に見える


ノーズ部の先端形状がそれほど尖っていないことから、このミサイルはマッハ1を超えるような高速度域を狙っている様には見えない。亜音速巡行ミサイルのノーズ部先端形状の様に見える。

似たような先端形状をしているミサイルとしては、米国のAGM-158 JASSM、ロシアのKh-101、フランス&英国のStorm Shadow等が挙げられる。どれも亜音速巡行に対応したミサイルで、加えてステルス性も意識された設計になっている。

ブレヴェストニク巡行ミサイルのノーズ部は、断面が三角形になっており、横から来るレーダー波を垂直に反射させない形状になっている。またノーズ部正面形状は上記の他ミサイル同様にステルス性に気を使っている様に見える。この映像を信じるなら、ブレヴェストニク巡行ミサイルは、ステルス性をある程度意識した亜音速巡航ミサイルとして設計されているのではないか。

ここから、ブレヴェストーク巡行ミサイルに搭載されているのは、原子力推進ラムジェットエンジンではなく、原子力推進ジェットエンジン(即ちターボジェットエンジンやターボファンエンジン型の原子力推進エンジン)を搭載していると考えられる。原子力によって射程は無限大だったとしても、速度は音速以下でそれほど早い訳ではなさそうだ。

ソ連時代において、有人航空機用途の大型の原子力推進ターボジェットエンジンの研究開発実績をロシアは持っているが、米国の様にミサイル用途の小型の原子力推進ラムジェットエンジンの開発実績はない。(公開情報としては無い)

この辺の過去の開発実績が、規模は異なるが方式として実績のある原子力推進ジェットエンジンを選択した理由の一つなのではないか。









4-2.ブレヴェストニク巡航ミサイル発射シーンに関する考察



ブースター燃焼時のブレヴェストニク巡航ミサイル
機体の腹に大きなブースターを抱えている
(下2つは画像解析のため白煙が消えている)


試験時の発射動画を見ると、腹に抱えた単純な固体燃料ロケットブースターで加速し、その後原子力エンジンに切り替える方式であることが分かる。この様な本体に対して、腹に抱えた大型のロケットブースターは、エンジン始動後切り離すと見られる。




チェイサー機のコックピットからの試験映像画像


動画では、ロケットブースター作動時「のみ」の映像を映しており、試験時のチェイサーとして有人航空機からの映像が映っているが、ブースターの白煙が雲の間に続く状態の場面しか撮影してない。(つまり、ブースター燃焼時)

同時に映っているミサイル映像も、ブースター火炎と白煙が続く状態の拡大図のみである。つまり、公開された映像は終始原子力ジェットエンジンが「作動してない状態」の映像しか見せていないと判断できる。






5.ブレヴェストニク巡航ミサイルの技術課題



5-1.かつて存在した米ソの原子力推進ジェットエンジン


米ソ両国とも、1950~1960年代において、原子力推進ジェットエンジン(原子力推進ターボジェットエンジン)の開発を行っていた。





米国GEが開発を行っていた原子力ジェットエンジン例:XNJ-140E
酸化ベリリウム原子炉式の原子力ジェットエンジンであった
最大出力121MW、最大乾燥重量27.5 トン(4.4kW/kg)


米国では、ロスアラモス国立研究所で研究されていた直接サイクルのガス冷却式原子炉が、各種の原子力推進エンジン研究開発へと発展した。直接サイクル型原子炉の開発(1951~1961年)は、主に3つの推進システム、原子力推進ターボジェットエンジン、原子力ラムジェットエンジン、原子力推進ロケットエンジンの開発が実施された。(SLAMはこの内の原子力ラムジェットエンジン)




1956年にソ連で検討された2形式の原子力ジェットエンジン
ターボ機械とシャフトが原子炉の外側にあるロッカー型(上)と同軸型(下)である




ソ連については、公開されている情報は米国に比べて限られるが、原子力推進ジェットエンジンの計画が米国と同時期に存在した。ソ連にはSLAMの様な原子力推進ラムジェットの研究開発を行っていたという情報はないが、一方で原子力推進ターボジェットを搭載した有人航空機の研究開発は実施されていた。

Myasishchev設計局では、M-30、M-52、M-56K、M-60等といった、原子力推進ジェットエンジン搭載型航空機の開発を行っていた。これらの原子炉では、原子炉からエンジンに熱を伝達するため、リチウムやナトリウムといった溶解金属冷却材が使用されていたという情報がある。一方で、エンジンは巧妙に作られており、「通常の航空燃料」でも作動するデュアル式であったらしい。(航空燃料を使用する場合は、原子炉を停止した状態での使用と見られる)

因みにこれらの原子力ジェットエンジンは、SLAMの原子力ラムジェットエンジンとは異なり、直接空気で冷却(1次冷却)するわけではなく、リチウムやナトリウムで1次冷却した後、熱交換器で2次冷却材として空気を使用していた。つまり、放射性物質を直接まき散らす訳ではない。

なお、ブレヴェストニク巡航ミサイルは原子力ジェットエンジンを搭載しているとみられるが、SLAMの様に、放射能をまき散らすタイプか、それが有人用原子力ジェットエンジンの様に、2次冷却を噛ましてまき散らさないタイプかは不明である。







5-2.ミサイル用原子力推進ジェットエンジンの技術課題


米ソが原子力推進ジェットエンジンの研究開発を中止して、半世紀以上経つ。しかし、再度原子力推進のジェットエンジンを開発しようとすれば、以下の様に、その技術課題というのは、今もなお当時と同じ要素になると考えられる。

当時の研究開発は、ソ連は有人大型爆撃機に搭載することを目指したが、ブレヴェストニクは巡航ミサイルであり、「小型化」という課題もある。


1.熱制御・熱マネージメント技術
ミサイルは航空機に比べて規模が小さく、搭載できるジェットエンジンも小さくなる。その結果、原子炉にとっては冷却用の空気流量が少ないので、どう効率よく冷却するかが課題となる。(=どう空気を効率よく加熱して空気を膨張させて推進力を与えるか)


2.耐熱性材料技術
冷却出来ない部分は、材料の耐熱性で対応するしかない。


3.小型原子炉技術
ミサイル規模の機体に実装できる原子炉の小型化が必要。その他各種補機の小型化。


⇒ 空気は推進剤である一方で、原子炉を冷却する冷却材である。(ブレヴェストニクがSLAMの様に直接冷却(1次冷却)で放射能を吐き出すのか、2次冷却でそれが抑えられているのかは不明)入ってくる空気流量や空気密度の関係で、巡航高度が制限されたりする可能性があるのではないか?







6.ブレヴェストニク巡航ミサイルの事故原因は何だったか?(推論)


以下は全て推定・推測となることをご了承願いたい。

2019年8月8日にロシア北部アルハンゲリスク州ニョノクサ近くにある、海軍の海上実験場で8日、爆発事故が発生し、実験作業にあたっていたロシアの原子力企業ロスアトムの職員5人が死亡した。

この事件について発表では、当初「ジェットエンジンの実験中に爆発」「液体燃料ジェットエンジンの実験中に爆発」と報道されていた。その後、「アイソトープ動力源(電池)」等、発表内容錯綜しており、原子力推進エンジンの事故を隠すためなのではないかと専門家等から意見が出ていた。

数日経過して、ブレヴェストニク巡航ミサイル開発中の事故であることの可能性が濃厚となってきたが、詳細については秘密事項であり、公にされていない。

当初の発表が嘘だったのではないかという意見があるが、言い回しの問題で、一部については嘘をついてないかもしれない。理由は以下のとおりである。


  1. ブレヴェストニク巡行ミサイルには、原子力推進ジェットエンジン(ターボジェットエンジン or ターボファンエンジン)が搭載している物と見られる。ジェットエンジンは、外部から空気を取り入れて噴流(ジェット)を生成する推進機関と定義されるので、「ジェットエンジンの実験中に爆発」という報道は嘘ではないとロシア側は主張出来る。
  2. 以前、ソ連が開発していた大型爆撃機用の原子力推進ジェットエンジンは、原子力推進を行いつつも、「通常の航空燃料」でも作動するデュアル式であったという情報がある。もしもブレヴェストニクに搭載されているエンジンがデュアル式であれば、液体燃料でも稼働するので、「液体燃料ジェットエンジンが爆発した」とロシア側が主張しても嘘ではない。
  3. また、エンジンを始動するためのスターターに「液体燃料」を使用していれば、始動時の一部を切り取れば、「液体燃料ジェットエンジン」とも言えなくはないので、ロシア側は嘘ではないと主張出来る。



事故原因は、発表が二転三転しており、真実は不明だが、「原子力推進ジェットエンジンの地上運転時に失敗した」という辺りが妥当な線ではないか。


上記の3番目で、スターターの話に触れたが、固体燃料ロケットブースターを使用して、ジェットエンジン回転部、原子炉が起動してない状態から発射されると考えられる。原子力推進ジェットエンジンの始動は、空中で行われることになると推測する。この推測には、以下の様な理由がある。


  1. ロケットブースターによる急激な加速度環境に起動した原子炉を晒すよりは、加速度が弱くなってから起動する方が、安全上理にかなっている。
  2. 地上で原子炉を始動して、ランチャー内部・周辺で事故があった場合、自爆状態になり、放射能をまき散らしランチャー周辺に近づけない。このため、発射後に距離を取った上でエンジンを始動する可能性が高いと推測する。(まあ今回は、自爆した訳だが…)
  3. 有人航空機にソ連がかつて搭載した原子力推進ジェットエンジンは、運転時に発生する放射線から乗員を守るために金属製の重たいシールドが必要であり、それらを搭載していた。積めば積むほど機体重量が重くなるシールドを余裕のないミサイル機体内部に搭載し、原子炉全方位から放射線が出ない様にシールド処理を施すだろうか?敵に対して打ち込む使い捨てのミサイルに、そこまで配慮するだろうか?仮に軽量化のためにシールドが不十分とすると、地上で十分な環境を整えず、原子炉を起動する行為は、被爆行為となる。
  4. 仮に軽量化のためにシールドが不十分とすると、ロケットブースターはジェットエンジンを起動できる所定の速度に到達させるための加速装置だけでなく、ロシア側から十分離れた安全圏でエンジン内部の原子炉を起動するために必要な安全装置になる。


(余談だが、ブレヴェストークに対して迎撃を行うため近づくミサイルを考えると、シールドが不十分な方向から接近すれば、放射線によって、電子機器が誤作動を起こす可能性があるのではないか?)


そして、原子力推進ジェットエンジンが始動する際には以下の様なシーケンスを取るものと考えられる。


  1. 固体燃料ロケットブースターでエンジンが起動できる所定の速度まで加速。
  2. 液体燃料等の化学剤スターターにより、ジェットエンジンを起動、空気を取り込み回転数を定常状態まで上げる。
  3. 原子炉を起動、空気での冷却開始・推進ソース切り替え。
  4. エンジンの定常巡行運転開始


といった具合だろうか。始動時の一部を切り取れば、「液体燃料ジェットエンジンの実験中」とも言えなくはない。

しかし、ブレヴェストニク巡行ミサイルの開発が進めば、この手の兵器は搭載弾頭が何であろうと、目標に命中しても、飛行に失敗しても、「原子力推進ジェットエンジン」という名の小型原子炉が、地面や海面に叩きつけられる。結果として、今回の事故の様に放射能汚染されることになる。弾頭抜きでも、この手のミサイルは、デフォルトのダーティーボムとなる、やっかいな兵器になるだろう。







7.追記:小型原子炉の構造と液体燃料スターターの推測


先に紹介したアメリカの有人用原子力推進ジェットエンジン:XNJ140E のレポートから、原子力推進ジェットエンジンの仕組みを紹介し、液体燃料が必要だった推定理由を追記して述べる。

XNJ140Eは、小型高出力原子炉を達成するために、地上の蒸気型大型原子炉の様に低濃度ではなく、ウラン単体で見れば、その濃度を核兵器級にまで上げた、高濃縮ウランが使用されていた。

XNJ140Eに搭載された小型原子炉の燃料は、濃縮二酸化ウラン(~93% U235)を含む酸化ベリリウムによって構成されていた。二酸化ウランは、酸化イットリウムによって安定化され、二酸化ウランのより高い酸化状態への変換を制限した仕様である。また燃料表面は、酸化ジルコニウムでコーティングされていた。このコーティングにより、酸化ベリリウムの蒸気腐食を防げた。なお、XNJ140E 原子炉の最大動作温度は、1388℃ である。


【参考文献】
COMPREHENSHIVE TECHNICAL REPORT GE DIRECT AIR CYCLE AIRCRAFT NUCLEAR PROPULSION PROGRAM
https://www.osti.gov/opennet/servlets/purl/1048135.pdf


冷却材には、冷却能力の高さ(=沸点及び比熱容量の高さ)から、液体金属であるリチウム(水素化リチウム)が使用されていた。物質としての冷却能力が高いため、過度に冷媒の圧力を高くすることなく、軽量構造のままで熱を原子炉から奪える。

ロシアの過去の原子力推進エンジンにも、先に説明した様に、リチウムやナトリウムで1次冷却を行っており、大きさこそ違えど、小型で高出力を達成する原子炉を搭載しなければならない理由から、濃縮型核燃料+液体金属冷却材という構成が、ブレヴェストニク巡行ミサイルのエンジンにも採用されている可能性は高いと考える。

そして、この様なタイプの原子炉を起動する場合には、常温で冷却材が固体であるために、冷却材を融点以上にエンジン起動前に事前加熱(余熱)せねばならない。つまり始動時には、スターターとなる化学剤が必要であり、それが液体燃料だった可能性はないだろうか。

もちろん、小型原子炉だけでなく、回転機械としてジェットエンジン機構に対しても、空気流れを送り込まなければならない。始動時にはブレードの回転数を上げるため、スタートガス発生が必要であり、ガス発生のスターターとなる化学剤が必要である。

この様に、原子力推進ジェットエンジンシステム全体の起動にスターターが必要であり、そのための液体燃料が搭載されていた可能性があると考える。







8.追記:事故原因(Update:2020.09)


ロシア極北アルハンゲリスク(Arkhangelsk)州で発生したミサイル実験場での爆発事故をめぐり、国営の原子力企業ロスアトム(Rosatom)のアレクセイ・リハチョフ(Alexei Likhachev)社長は、死亡した研究員5人は「新兵器」の開発を進めていたことを認め、爆発事故後も実験を継続すると明言した。

事故は8日、白海(White Sea)沿岸の北極圏にある軍事施設で起きたが、当局が原子力関連の事故であることを認めたのは2019年8月10日になってからであった。爆発により放射線レベルの急激な上昇がみられたということである。 

ロスアトムは、職員らはミサイルの「放射性同位体供給源」に関する工学および技術サポートを行っていたと説明。爆発は海上の施設でミサイル実験を行っていた際に燃料に引火して発生し、爆風で複数の職員が海に吹き飛ばされたとしている。これらは、核爆発ではなく、ミサイルエンジンの実験中に起きた爆発で、燃料に使用された放射性物質が周辺に飛散したとロシア軍当局者が地元住民らに説明した。

事故を巡り専門家の間では、開発中の原子力推進式巡航ミサイルのエンジンの小型原子炉が爆発したとの推測と、「放射性同位元素を使った液体燃料推進システム」の事故との推測、2つの見解が出ていたが、少なくとも発表からは、「化学液体燃料が爆発を引き起こし、原子力部分が巻き添えになって破損した。」と考えるのが、整合性が合う。









    





References

[1] Ракета 9М730 / Крылатая ракета с ЯЭУ, http://militaryrussia.ru/blog/topic-895.html
[2] ロシア軍施設で5人爆死 原子力推進式ミサイル実験で事故か,
     https://www.bbc.com/japanese/49327600
[3] В "Росатоме" рассказали подробности взрыва при испытаниях ракеты,
     https://ria.ru/20190810/1557375134.html
[4] "Росатом" объяснил радиационный скачок в Северодвинске,
     https://rg.ru/2019/08/10/reg-szfo/radiacionnyj-skachok-v-severodvinske-poluchil-obiasnenie-v-rosatome.html
[5] 放射線量も上昇「ロシア爆発事故」を引き起こした「秘密兵器」実験, 小泉悠 2019年8月10日
     https://www.fsight.jp/articles/-/45733
[6] ロシア軍施設で爆発事故、原子力推進巡航ミサイルの可能性, JSF, 2019/8/10(土) 23:58
     https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20190810-00137920/
[7] ロシア爆発、兵器用の小型原子炉開発に関連, 共同通信
     https://this.kiji.is/533750027298817121?c=39550187727945729
[8] М-60. Атомный самолёт В.М. Мясищева
       https://topwar.ru/77826-m-60-atomnyy-samolet-vm-myasischeva.html
[9] SOVİET TOP SECRET NUCLEAR AIRPLANE M-60,
       https://www.akademiportal.com/soviet-top-secret-nuclear-airplane-m-60/
[10] SLAM, https://www.globalsecurity.org/wmd/systems/slam-pics.htm
[11] “Flyable” Reactors & Neutron Coupling,
       http://www.holosgen.com/about-us-1-2/
[12] XNJ140E part 1, http://www.aerospaceprojectsreview.com/blog/?p=894
[13] XNJ140E part 2, http://www.aerospaceprojectsreview.com/blog/?p=903
[14] https://www.wikipedia.org/
[15] https://twitter.com/toughsf/status/1016013116067500032
[16] University of California Radiation Lab, Livermore site,
       https://www.osti.gov/servlets/purl/4217328
[17] ロシアのミサイル実験中の爆発事故、放射性物質を使った動力源が関与,
       https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-08-13/PW5VFC6TTDS101
[18] Burya La-350, https://fas.org/nuke/guide/russia/icbm/burya.htm
[19] ミサイル実験場爆発事故で死亡した研究員ら、「新兵器」開発に従事 ロシア



In August 2019 in Russia, there is a lot of talk about the 9M730 Brevestnik nuclear-powered propulsion cruise missile, which may have caused a nuclear accident during its development. This article describes a discussion of the 9M730 Brevestnik nuclear-powered propulsion cruise missile.






1.9M730 Brevestnik Nuclear Cruise Missile


9M730 Burevestnik Burevestnik, Burevestnik (NATO CODE: SSC-X-9 Skyfall Skyfall Skyfall) (NATO code like the title of 007...) is a nuclear-powered propulsion cruise missile under development by Russia. The missile was announced by President Putin on March 1, 2018, along with a variety of new weapons, and will be powered by a nuclear-powered air-breathing engine. It is said to have a vast global range, as it will be nuclear propelled rather than chemically propelled.






2.A revival of a Cold War-era concept


During the Cold War, the nuclear-powered propulsion cruise missile was a long-range cruise missile capable of crossing the continent that was considered in the United States in the 1950s and 1960s. However, developments in technology such as intercontinental ballistic missiles (ICBMs), which could reach targets in a shorter time frame, led to the cancellation of the program at that time.

In recent years, the United States has been developing a ballistic missile defense (MD) system capable of intercepting ballistic missiles, and Russia has been exploring multiple countermeasures to counter this, one of which is the Brevestnik cruise missile, a revival of the US concept from the 1950s and 1960s.

Several new weapons developments are being carried out in Russia with the aim of going under the MD, and while the formula is different from the Avangard and other new weapons groups announced by President Putin on March 1, 2018, the objectives are the same.


【Related article on new weapons introduced by President Putin on March 1, 2018】




In the Soviet Union, too, the concept of an intercontinental cruise missile existed, but it was not developed as a "nuclear propulsion" missile. It was limited to the development of larger, chemically propelled ramjet cruise missiles such as the Burya La-350 (Burya La-350).




Burya La-350 Ramjet intercontinental cruise missile



At the same time that the United States was developing the SLAM nuclear-propelled ramjet missile, the SM-64 Navaho (Navaho) ramjet cruise missile and the SM-62 Snark (Snark) turbojet cruise missile were being developed as separate programs for chemical-propelled long-range cruise missiles in the United States. These, like the SLAM, were intended to be capable of long range intercontinental flights.




SM-64 Navaho Ramjet cruise missile






3.Once Planned Nuclear Propelled Missile: Nuclear Ramjet Missile SLAM



In public information, the United States once developed a nuclear-powered ramjet missile: the SLAM. The nuclear-propelled Supersonic Low Altitude Missile (SLAM) was a development program in the United States that was conceived in 1955 and cancelled in 1964.



SLAM(Supersonic Low Altitude Missile)



SLAM was a missile program to launch nuclear warheads into enemy territory at low altitude, under the radar of ground defence, powered by a nuclear propelled ramjet engine. It was planned to have a range of approximately 182,000 km, with a target performance of more than 4.5 times the diameter of the Earth. However, the development of ICBM technology in the 1950s and 1960s rendered this plan an outdated concept. The development of ground-based defensive radars also made the evasive strategy of avoiding radar at low altitude obsolete.

In addition, SLAMs also had serious problems with feasibility. The SLAM had a ramjet engine that was propelled by heating (or, on the reactor side, cooling) the air taken in through the air intake rather than burning chemical fuels, but the air was cooled and exchanged directly against the reactor to obtain propulsion gas (hot air), which resulted in large amounts of radioactive material being released into the atmosphere. The specification of the air is to be emitted, and this was considered a problem.

(However, because of the speed of the missiles, the activated air released by the heat from the reactor would not stay in one place, but would be spread over a wide area. (It was claimed at the time that this would have a low level of impact on the ground.)

A project called "Project Pluto" was underway to develop a nuclear propulsion ramjet engine for cruise missiles. The application and destination for application was SLAM, mentioned earlier; two nuclear propulsion engines were tested in 1961 and 1964 at the U.S. Department of Energy Nevada Test Site.

The main technical issues for the engines at that time were reactor miniaturization and engine heat resistance, with metallurgy and materials engineering being the bottleneck to realization. The engine, code-named "Tory", which was being tested, was under high temperature conditions that would melt the metals used in a conventional jet engine under operating conditions, which required the development of materials that could withstand these conditions, and so new developments of nuclear fuels, including high temperature resistant ceramics and ceramic refractory materials were carried out.






3-1.Operating principle of the nuclear ramjet engine




Schematic diagram of the nuclear ramjet engine and
Examples of Mach numbers and heat exchanger temperatures estimated by Lawrence Livermore Laboratory


*To avoid confusion, let me first say that this is the SLAM system and not the working principle of the Brevestnik cruise missile.

SLAM used a nuclear propelled ramjet engine. This involves accelerating the aircraft with a solid rocket booster and simply allowing air to enter the engine's air intake to start the engine at a speed range where the ram effect could be used to compress the air (practically speaking, above Mach 1). This allows the compressed air to be taken in, heated in a heat exchanger with the reactor, and the hot air expanded through the nozzle to be converted into high speed gas for thrust.

A normal ramjet engine mixes air and fuel to obtain hot, high-pressure gas by chemical combustion, but a nuclear rocket engine heats air directly from the nuclear reactor to obtain hot gas (air). If the main focus is on the reactor side instead of the propulsion system, this heat exchange process becomes the cooling process of the reactor. In other words, it is an engine technology that is established on the basis of a fine balance that can lead to meltdown if the balance of heat exchange is disrupted.








4.Footage of the Brevestnik cruise missile released


Whereas in the past the US tried to develop a ramjet nuclear propulsion engine, this time Russia appears to be trying to develop a jet-powered, i.e. turbo-jet or turbo-fan engine-type nuclear propulsion engine, which can be judged by the video footage of the Prevenik cruise missile that has been released. This can be judged from the footage of the Prevestrnik cruise missile that has been released.



Test footage of the Brevestnik cruise missile released by Russia








4.Is the released Brevestnik a subsonic cruising nuclear jet engine missile with stealthy intent?


The air intake of the ramjet-powered aircraft, like the SLAM, is designed to fly at supersonic speeds, and the air intake of the fuselage and engine is often at a sharp angle to generate shock waves. However, the nose of the Brevestnik cruise missile is not shaped like that.





Comparison of Brevestnik cruise missiles and the tips of subsonic cruise missiles from different countries
It appears to be a subsonic missile designed to be stealthy.




Since the nose tip is not so sharp, this missile does not appear to be aimed at a high velocity range exceeding Mach 1. It looks like the nose tip shape of a subsonic cruise missile.

Missiles with a similar tip shape include the U.S. AGM-158 JASSM, Russia's Kh-101, and the French and British Storm Shadow. All of these missiles are designed for subsonic cruising and, in addition, are designed to be stealthy.

The nose of the Brevestnik cruise missile has a triangular cross-section, which prevents vertical reflection of radar waves coming from the side. The front shape of the nose section, like the other missiles mentioned above, appears to be designed to be stealthy. If these images are to be believed, the Brevestnik cruise missile may have been designed as a subsonic cruise missile with some degree of stealth consciousness.

From this, we can assume that the Breveznik cruise missile is powered by a nuclear propelled jet engine (i.e., a turbojet engine or turbofan engine type nuclear propulsion engine) rather than a nuclear propelled ramjet engine. Even if nuclear power provided infinite range, the speed is unlikely to be much faster than the speed of sound.

During the Soviet era, Russia has experience in research and development of large nuclear propulsion turbojet engines for manned aircraft, but unlike the United States, Russia has not developed small nuclear propulsion ramjet engines for missiles. (Not in the public domain.)

This is one of the reasons why the nuclear propulsion jet engine was selected as the method of choice, although the scale of the propulsion system is different.







4-2.Thoughts on the Brevestnik cruise missile launch scene





Brevestnik cruise missile during booster burn
He's got a big booster in the belly of the fuselage.
(The bottom two are missing white smoke due to image analysis.)



The video of the test launch shows that it is a simple solid-fuel rocket booster held in the belly to accelerate the rocket and then switch to a nuclear engine. In contrast to this type of body, the large rocket booster held in the belly is supposed to be detached after engine start-up.




Test image from the cockpit of a Chaser



The video shows footage of the rocket booster "only" in operation, and footage from a manned aircraft is shown as a test chaser, but it only shows a scene with the booster's white smoke continuing through the clouds. (That is, when the booster is burning.)

The missile footage shown at the same time is also only an enlarged view of the booster flame and white smoke continuing. In other words, it can be concluded that the footage released to the public only shows images of the nuclear jet engines "not working" throughout.








5.Technical Challenges for Brevestnik Cruise Missiles


5-1.U.S. and Soviet nuclear propulsion jet engines that once existed.


Both the U.S. and the Soviet Union developed nuclear propulsion jet engines (nuclear propulsion turbojet engines) in the 1950s and 1960s.




Example of a nuclear-powered jet engine developed by GE in the United States: XNJ-140E
It was a nuclear jet engine with a beryllium oxide reactor
Maximum output 121MW, maximum dry weight 27.5 tons (4.4kW/kg)




In the United States, direct-cycle gas-cooled reactors, which were being studied at Los Alamos National Laboratory, evolved into research and development of various types of nuclear propulsion engines. The development of direct-cycle reactors (1951-1961) involved the development of three main propulsion systems: the nuclear propulsion turbojet engine, the nuclear ramjet engine, and the nuclear propulsion rocket engine. (SLAM is the nuclear ramjet engine.)






Two forms of nuclear-powered jet engines considered in the Soviet Union in 1956
The turbomachinery and shaft are rocker (top) and coaxial (bottom) types outside the reactor




The Soviet Union had a nuclear-powered propulsion jet engine program in existence at the same time as the United States, although publicly available information about the Soviet Union is more limited than that of the United States. There is no information that the Soviet Union had research and development of nuclear propelled ramjets such as the SLAM, while research and development of manned aircraft with nuclear propelled turbojets was underway.

The Myasishchev Design Bureau was developing nuclear propulsion jet engine-powered aircraft, such as the M-30, M-52, M-56K, M-60, etc. There is information that these reactors used molten metal coolants such as lithium and sodium to transfer heat from the reactors to the engines. The engines, on the other hand, were apparently cleverly built and were dual-engineered to run on "normal aviation fuel". (If aviation fuel was used, it appears to have been used with the reactor shut down.)

Unlike the SLAM nuclear ramjet engines, these nuclear jet engines were not directly cooled by air (primary cooling), but used air as a secondary coolant in a heat exchanger after primary cooling with lithium and sodium. In other words, it does not spew radioactive material directly.

The Brevestnik cruise missile is believed to have a nuclear-powered jet engine, but it is unclear whether it is the type of missile that spews radioactivity, as SLAM does, or the type of missile that doesn't spew secondary cooling, as the manned nuclear-powered jet engines do.








5-2.Technical issues of nuclear propulsion jet engines for missiles 


More than half a century has passed since the United States and the Soviet Union stopped research and development of nuclear propulsion jet engines. However, if they try to develop a nuclear propulsion jet engine again, the technical challenges will still be the same factors as they were then, as described below.

Research and development at the time was aimed by the Soviet Union at mounting it on a large manned bomber, but the Brevestnik was a cruise missile, and there was also the challenge of "miniaturization".



1.Thermal control and thermal management technology
Missiles are smaller than airplanes, and the jet engines they can carry are also smaller. As a result, the air flow for cooling the nuclear reactor is low, so the challenge is how to cool it efficiently. How to efficiently heat the air and expand it to provide propulsion.



2.Heat-resistant material technology
The only way to deal with the parts that cannot be cooled is to deal with the heat resistance of the materials.



3.Small nuclear reactor technology
Miniaturization of reactors that can be mounted on missile-sized aircraft. Miniaturization of various other auxiliary equipment.


⇒ Air is a propellant and a coolant for the reactor. (It is unclear whether Brevestnik spits out radioactivity by direct cooling (primary cooling) like SLAM, or whether it is suppressed by secondary cooling), but there is a possibility that the cruising altitude may be limited due to the incoming air flow rate and air density.






6.What was the cause of the Brevestnik cruise missile accident? (Reasoning)


Please note that all of the following is an estimate and speculation.

On August 8, 2019, an explosion occurred at the navy's maritime test site near Nyonoksa in the northern Russian province of Arkhangelsk on August 8, 2019, killing five employees of the Russian nuclear company Rosatom, who were working on the experiment.

The incident was initially reported as "an explosion during a jet engine test" or "an explosion during a liquid fuel jet engine test". Later on, the details of the announcement, such as "isotope power source (battery)," were mixed, with experts and others suggesting that it was an attempt to hide the nuclear propulsion engine accident.

A few days later, the possibility that this was an accident during the development of the Brevestnik cruise missile has become stronger, but the details are confidential and have not been made public.

Some have suggested that the initial announcement may have been a lie, but due to a matter of wording, they may not have been lying about some of it. The reasons are as follows.


  1. The Brevestnik cruise missile is believed to be equipped with a nuclear propulsion jet engine (turbojet engine or turbofan engine). A jet engine is defined as a propulsion engine that draws in air from the outside to generate a jet stream, so the Russians can claim that the reports of a jet engine explosion during testing are not false.
  2. There is information that the Soviet Union had previously developed a nuclear-powered propulsion jet engine for a large bomber, which was a dual system that provided nuclear propulsion but also ran on "conventional aviation fuel". If the engines on the Brevestnik were dual type, then they could run on liquid fuel, so it would not be a lie for the Russians to claim that the "liquid fuel jet engine exploded".
  3. Also, if "liquid fuel" was used for the starter to start the engine, the Russians can claim that it is not a lie, because if you cut out part of the start-up, it could be called a "liquid fuel jet engine".



The cause of the accident has been announced in two or three different ways, and the truth is unknown, but I think a reasonable line is around "failure of the nuclear propulsion jet engine during ground operation".


In the third above, I mentioned the starter, but it is believed that the jet engine was launched from the rotating part of the jet engine and the reactor not yet started, using a solid fuel rocket booster. We assume that the nuclear propulsion jet engine would be started in the air. This supposition is based on the following reasons.


  1. Rather than exposing a nuclear reactor to the rapid acceleration of a rocket booster, it makes more sense to start the reactor after the acceleration has decreased.
  2. If the reactor is started on the ground and there is an accident inside or around the launcher, it will self-destruct, spreading radioactivity and preventing it from getting close to the launcher. For this reason, it is highly likely that the engines will be started after the launcher has been fired and at a distance. (Though in this case it did self-destruct...)
  3. The nuclear propulsion jet engines that the Soviets used to mount on manned aircraft required heavy metal shields to protect the crew from radiation generated during operation, and they were loaded with them. Would the shields, which became heavier and heavier as they were loaded, be placed inside a missile fuselage with no room to spare, and then shielded so that radiation would not be emitted from all sides of the reactor? Would we give that much thought to a disposable missile launched against an enemy? If the shielding is inadequate to save weight, then the act of starting the reactor without adequate ground conditions would be an act of exposure.
  4. If shielding is inadequate to save weight, the rocket booster would not only be an accelerator to get the jet engine to a predetermined speed at which it could be started, but it would also be a safety device necessary to start the reactor inside the engine in a safe zone far enough away from the Russian side.


(As an aside, given a missile approaching to intercept against Brevezstoke, could the radiation cause the electronics to malfunction if it approaches from a poorly shielded direction?)


And the sequence of nuclear propulsion jet engine start-up is considered to be as follows.


  1. The solid rocket booster accelerates the engine to a predetermined speed at which it can be started.
  2. A liquid fuel or other chemical agent starter starts the jet engine, and air is taken in to increase the speed to steady state.
  3. Start up the reactor, start air cooling and switch propulsion sources.
  4. Start of steady-state engine operation.


With regard to the above, if we cut out some of the start-up time, it could be said to be "testing a liquid fuel jet engine".

However, if the development of the Brevestnik cruise missile goes ahead, no matter what warhead this type of weapon carries, whether it hits the target or fails to fly, the small reactor called a "nuclear propulsion jet engine" will be slammed into the ground or sea surface. The result would be radioactive contamination, as was the case in this accident. Even without a warhead, this kind of missile would be a tricky weapon, a default dirty bomb.






7.Postscript: Small Reactor Structure and Liquid Fuel Starter Speculation


This article introduces the mechanism of the nuclear propulsion jet engine from the report of the US manned nuclear propulsion jet engine: XNJ140E, and explains the presumed reason why the liquid fuel was necessary.

XNJ140E used highly enriched uranium to achieve a small size high power reactor, which was not low in concentration like the large steam type reactors on the ground.

The fuel for the small reactor on XNJ140E consisted of beryllium oxide containing enriched uranium dioxide (~93% U235). The uranium dioxide was stabilized by yttrium oxide, a specification that limited the conversion of the uranium dioxide to higher oxidation states. The fuel surface was also coated with zirconium oxide. This coating prevented steam corrosion of the beryllium oxide. The maximum operating temperature of XNJ140E is 1388°C.


【Reference】
COMPREHENSHIVE TECHNICAL REPORT GE DIRECT AIR CYCLE AIRCRAFT NUCLEAR PROPULSION PROGRAM
https://www.osti.gov/opennet/servlets/purl/1048135.pdf


Because of its high cooling capacity (= high boiling point and specific heat capacity), lithium hydride, a liquid metal, was used as the coolant. Because of its high cooling capacity as a substance, it can remove heat from the reactor without excessively high refrigerant pressure and in a lightweight structure.

Russia's nuclear propulsion engines in the past also used lithium and sodium for primary cooling, as explained earlier, and for the reason that they had to have small, high-powered reactors of different sizes, I think it is highly likely that the configuration of enriched nuclear fuel plus liquid metal coolant was used in the engines of the Brevestnik cruise missiles as well.

And when starting up such a reactor, the coolant must be pre-heated (preheated) to above its melting point before starting up the engine, since the coolant is solid at room temperature. This means that a chemical agent is needed as a starter at start-up, and I wonder if it is possible that it was liquid fuel.

Of course, an air stream has to be pumped into the jet engine mechanism as a rotating machine as well as the small reactors. At start-up, a chemical agent as a starter for the gas generation is needed to generate the starting gas to increase the speed of the blades.

Thus, we believe that a starter is needed to start the entire nuclear propulsion jet engine system and that a liquid fuel may have been installed for this purpose.







8.Postscript: Cause of accident (Update:2020.09)


Alexei Likhachev, president of the state-run nuclear company Rosatom, said the five researchers who died were developing "new weapons" over an explosion at a missile test site in Russia's far northern Arkhangelsk province. He admitted that he would continue to conduct the tests after the explosion.

The accident took place on August 8 at a military facility in the Arctic Circle off the coast of the White Sea, but it was not until August 10, 2019, that authorities acknowledged it was a nuclear-related incident. They said the explosion caused a sharp increase in radiation levels. 

Rosatom explained that officials were providing engineering and technical support for the missile's "radioisotope source". The explosion occurred when the fuel ignited while conducting missile tests at an offshore facility, and the blast blew several personnel out to sea, he said. These were not nuclear explosions, but rather explosions that occurred during missile engine testing, and the radioactive material used in the fuel was scattered around the area, Russian military officials explained to local residents.

There were two schools of thought among experts over the accident, one speculating that a small reactor in the engine of a nuclear-propelled cruise missile under development exploded, and the other that it was an accident of a "liquid-fueled propulsion system using radioactive isotopes," but, at least from the announcement, "the chemical liquid fuel caused the explosion and the nuclear part of the It was damaged by collateral damage. It fits the consistency of the idea.










    





References

[1] Ракета 9М730 / Крылатая ракета с ЯЭУ, http://militaryrussia.ru/blog/topic-895.html
[2] ロシア軍施設で5人爆死 原子力推進式ミサイル実験で事故か,
     https://www.bbc.com/japanese/49327600
[3] В "Росатоме" рассказали подробности взрыва при испытаниях ракеты,
     https://ria.ru/20190810/1557375134.html
[4] "Росатом" объяснил радиационный скачок в Северодвинске,
     https://rg.ru/2019/08/10/reg-szfo/radiacionnyj-skachok-v-severodvinske-poluchil-obiasnenie-v-rosatome.html
[5] 放射線量も上昇「ロシア爆発事故」を引き起こした「秘密兵器」実験, 小泉悠 2019年8月10日
     https://www.fsight.jp/articles/-/45733
[6] ロシア軍施設で爆発事故、原子力推進巡航ミサイルの可能性, JSF, 2019/8/10(土) 23:58
     https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20190810-00137920/
[7] ロシア爆発、兵器用の小型原子炉開発に関連, 共同通信
     https://this.kiji.is/533750027298817121?c=39550187727945729
[8] М-60. Атомный самолёт В.М. Мясищева
       https://topwar.ru/77826-m-60-atomnyy-samolet-vm-myasischeva.html
[9] SOVİET TOP SECRET NUCLEAR AIRPLANE M-60,
       https://www.akademiportal.com/soviet-top-secret-nuclear-airplane-m-60/
[10] SLAM, https://www.globalsecurity.org/wmd/systems/slam-pics.htm
[11] “Flyable” Reactors & Neutron Coupling,
       http://www.holosgen.com/about-us-1-2/
[12] XNJ140E part 1, http://www.aerospaceprojectsreview.com/blog/?p=894
[13] XNJ140E part 2, http://www.aerospaceprojectsreview.com/blog/?p=903
[14] https://www.wikipedia.org/
[15] https://twitter.com/toughsf/status/1016013116067500032
[16] University of California Radiation Lab, Livermore site,
       https://www.osti.gov/servlets/purl/4217328
[17] ロシアのミサイル実験中の爆発事故、放射性物質を使った動力源が関与,
       https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-08-13/PW5VFC6TTDS101
[18] Burya La-350, https://fas.org/nuke/guide/russia/icbm/burya.htm
[19] ミサイル実験場爆発事故で死亡した研究員ら、「新兵器」開発に従事 ロシア


2019年8月13日火曜日

引っ越し本棚、機動性のある本棚の選び方, 本棚機動性理論, Bookshelf Mobility Theory


引っ越しの本棚、機動性のある本棚の選び方, 本棚機動性理論, Bookshelf Mobility Theory






本棚は、単なる書庫であるのみならず、インテリアであり、個人が持てる最小単位の知識の源泉であり、本というコレクションのディスプレイ棚でもある。デザインの良い本棚は、色々な商品ラインナップがある。

しかし、固定された広い家を持つ人なら兎も角、度々引っ越しする人にとっては、本棚の機動性はとても重要だ。そこで、機動性を重視した本棚の選び方について、解説する。



      




1.「本棚」という家庭の中の知識庫


家の中で暇を潰そうとすれば、TV、スマフォ、PC等があるが、外部とのネットワークが遮断された状況でも、電源が無くとも、コンテンツを消費できる伝統的なメディアが、紙の書籍である。

情報産業が発達した現代でこそ、無限にストック出来、常に携帯できる利便性から電子書籍が流行っている。しかしながら、長期間の情報保存、閲覧する際の物理的制約のなさ(電子書籍は、複数持っていても一画面しか見れないが、紙なら3次元空間で広げれるだけ展開できる)等から、まだまだ紙の書籍の需要は多い。

電子化が進んだ現在でもなお、「紙の本が好きだ」という人は多いだろう。この嵩張るメディアを集約するストレージ、家庭の中の知識庫と言うべき存在が「本棚」である。

余談だが、最近では、子供の頃に家庭において本が何冊あったかが、大人になってからの読み書き能力、数学の基礎知識、ITスキルの高さに比例する事が知られている。

【参考文献】「自宅にあった紙の本の冊数」が一生を決める, https://toyokeizai.net/articles/-/245484 

本を持っている事が重要か、それとも本を持っていなくとも、その知識が頭にあることが重要か。この課題は、長年考えてきた事ではあるが、両方必要なのではないか。知識を頭に詰め込む時間にも限界があるし、手元にあれば外部記憶装置として働く。書籍保有も重要ならば、どんな本棚を持つかということも重要だ。




2.本棚の機動性


紙の本を沢山買うのであれば、常に本棚を整備するという課題が付きまとう。紙の本は、まとめるとかなり大きな重量を持つから、沢山の本を収納できる本棚は、耐久性が高くなくてはならない。しかし耐久性が高いという事は、分解や移動の融通が利かない。

最近では、備え付けのカッコいい高級本棚や安く見栄え良い本棚は、巷に溢れている。しかしながら大抵の本棚は、幾度もの引っ越しに対応できる「機動性」を持っていない。理由は以下の通りである。



1. 備え付けのカッコいい本棚、高級本棚

重量が大きい、引っ越しに適さない。移動できない。高級な本棚は一体型で、分解出来ないから、そもそも機動性が無い。仮に移動出来たとしても、引っ越し費用が嵩張り、幾度もの引っ越しに対応出来ない。



備え付けの大型本棚には機動性がない




2. 安く見栄えの良い本棚

ホームセンター、ニトリ、IKEA等、セルフ組み立ての安物は、組み立て工程において木工用ボンド等を利用してはめ込みで組み上げるの基本である。回数を重ねるような、分解 ⇒ 組み立て ⇒ 分解⇒ 組み立てを複数回行う耐久性はなく、基本的に一回設置の使い捨て。


 

安くて見栄えの良い本棚にも機動性がない
購入時に分解状態で配達されるが、DIY組み立て工程に木工用ボンドや木ネジを使ってる等、分解して複数回再度組み立てが出来る仕様ではない物が多い。これらは、一回限りの設置を想定して製造されている。(右はボンドを多用する事が明記されている説明書例)



上記2つは、固定された広い家を持つ人なら兎も角、度々引っ越しする人にとっては、どちらも難しい選択肢だ。備え付けのカッコイイ高級本棚を買うと、それを移動させるだけの引っ越し費用が嵩む。一方、安くて見栄えの良い本棚を買えば、引っ越し時に分解できず、毎回粗大ごみとして捨てなければならない。

(本棚を沢山展開できる居住空間、スペースを確保できる方々が羨ましい…)






3.本棚機動性理論 Bookshelf Mobility Theory


そこで、「本棚機動性理論」(Bookshelf Mobility Theory)を提唱したい。この概念は、幾度もの引っ越しに対応した、簡単に分解出来て、軽くて丈夫な機動性のある本棚の最適解を探し、その提案を行う。必要な要件を次に掲げる。

  1. 多少のデザイン性
  2. 本棚として耐え得る構造強度
  3. 直ぐに分解出来、移動後再構築出来る機動性
  4. 本が増えた時の拡張性(追加部品の入手性)



3-1.機動性のある本棚の素材「スチール・鉄」


機動性のある本棚の素材。この結論は、金属である。恐らく鉄で出来たスチール本棚が価格や構造強度、分解の面でも最適解だ。決して木材で製造された本棚ではない。


本棚の素材として木材(大体は合板)は手軽だが、強度を持たせるために多くの厚みや量を必要とする。結果、本棚は重くなる。鉄は重いが、強度があるので、薄く少ない量で本棚の強度を支えれる。結果として、両者で作った本棚の重さは、大体変わらなくなる。

しかし、木材の天板である合板はたわむので、耐久性は鉄の方良い。また、天板のたわみサポートとして構造材で補強するのも鉄だとよく実施されているが、木材ではそれがなされていない。(このため、天板の横方向長さ距離を制限して区画を区切る本棚が多い)
これらの背景から、スチール本棚の勝利である。



スチール本棚(左)と合板本棚(左)の比較


スチールは素材の強度があり天板下を構造材で補強することもあり、横方向長さを長く取れるが、合板ではそれが出来ず、横方向長さを制限して区画を小まめに区切ることで、耐久性を実現している




 

合板によるDIY机(右)と合板の製品机(左)の比較


例として合板のみで作成した机(右)と鉄の構造材で補強した合板机(左)を示す。右の様に合板で机を作ると、たわみが出て来て使用に支障を来たす。左は合板下の端に沿ってスチールの構造材で補強されているため、たわみの問題を解決出来る。






全面等分布荷重 及び 中心集中荷重の計算関係式


素材の縦弾性係数(ヤング率)により、たわみが変わってくる
鉄は205(E/GPa)に対して、木材は13(E/GPa)




3-2.家庭用汎用スチールラック(メタルラック)は避けたほうが良い


素材は鉄が良いが、鉄のスチールラックでも、銀色ピカピカの汎用スチールラック・メタルラックはオススメはしない。学生等の一人暮らしに役立つ、安くて手に入りやすい定番品だが、機動型本棚として使用するのは下記の理由から、微妙である。



1. 本棚に専用設計されていない、見た目が悪い

台所から、居間まで、様々な置物棚として、汎用性を考えた最大公約数的な構造と作りになっている。つまり、本棚として専用設計されていない。このため幾つか、不都合な点がある。

まず、見た目がギラギラの銀色で、家具として落ち着かない。安っぽい。デザイン性が悪い。この家具デザインが合う場面は、台所ぐらいなのではないか。


本棚としての専用設計でもなく、メタルラックの本棚としてのデザイン性は皆無である




2. 別途、高い天板シートを買う必要がある

各段の面を形成する金網、細いスチール支柱の間は、スカスカであり、各段に本を置くとき、底面を面で支える為には、端から端まで横断する別売りのコルクボードやプラスチックボードを追加で買わなければいけない。

メタルラックには沢山の種類があるが、これらのボードは、通常付属しない。そして全てのメタルラックに必ずオプションとしてこれらのボードが容易されているとは限らない。製品としてないものは、その強度のボードを自作しなくてはならない。

また、販売されていたとしても、本体ラックとの値段との比率で、かなり値が張る。コストパフォーマンスが悪く、そこまでしてメタルラックを本棚に修繕すべく投資するよりは、本棚専用設計の物か、底面が平面で形成されている製品を選んだ方が良い。




メタルラックでは、天板がスカスカなので、別途シートを買う必要がある
そのシートも塩化ビニールのフニャフニャな物だったり。コルクボードだったり、薄いプラ板だったり、種類によってまちまちである。書籍を置くため、シートは固い物を選ぶ必要があり、追加の投資と売ってない場合は自作が必要となる。




3. 構造が貧弱、分解時の問題

4か所の支柱部分で支えるプラスチックの引っかけの固定であり、構造が貧弱である。ネジ等を用いて各部分が独立して外せる本棚に対して、分解時に力を入れて外していく必要があり、各段の取っ払いは、上から順番にしか外せないため、労力がかかる。簡単なのは、天板の部分を叩いて外すことだが、ラック平行部へのダメージは毎回かかって、歪む可能性が高い。分解時にプラスチックハンマーが必要となるだろう。


 

メタルラックは素材の変形、引っかかりに任せてプラスチックで固定されている
このため、構造が貧弱で、分解時の問題も存在する




4. 本棚としての大きさ不一致

奥行が本棚として利用するには大きかったり、各段のそれぞれの縦幅を大きく作っている。(狭くするには、追加段部品の発注が必要)そのため、デッドスペースができて、高密度収納には向かない。


本棚として縦も奥行きも過剰である場合が多い。高密度収納と、直接目的の本を一覧してピックアップし取り出しやすい利便性には不向きである。




3-2.汎用スチールラックでも本棚として使用可能な製品


一方で、汎用スチールラックであっても、本棚として、それなりに使用可能な製品もある。条件を以下に示す。

  1. 天板が全て穴や隙間が開いていないスチール板が使用されてること
  2. 購入時に奥行きの選択肢が、30cm程度の短いスペックの物が選べること(書籍の奥行きと対応、奥行きが大きすぎてデッドスペースを取らないデザイン)
  3. 縦幅の設定変更を小まめに出来ること(書籍の縦幅に自由に対応、縦幅が大きすぎてデッドスペースを取らないデザイン)
  4. 天板その他、追加部品のオプションが購入出来る入手性(通常の汎用スチールラックは、標準で多くの天板が付属していないため、縦幅の大きい本棚になりうる。このため、追加天板等を購入して、自分で任意に設計出来ると良い)
  5. エクステンション等可能な拡張性
  6. 色が選べると良い(部屋の明るさやイメージに合わせるため)

下記の画像は、1980年代から既にある、ホームセンター等での定番商品だが、奥行き31cmの物を選ぶことで書籍としては丁度良くなる。製品に加えて追加天板を買うことで、縦幅も調節できる。取り外しは、ボルトねじ止めなので、分解・解体からの移送、そして再構築も容易だ。



 ⇒ 

追加天板と固定具・ネジを追加し、拡張した汎用スチールラック例

通常の販売品2つをエクステンションを付けて合体させ、端4か所の支え支柱を伸ばし、2列約2m天井近くまで伸ばした例。更に上に段数を付けて、かつ必要な天板を追加して改造している。

 
Amazon等では、「ニューファンシーラック」の名前で以下、売られている。他にも追加の部品や互換製品がホームセンター等で比較的手に入りやすい。書籍用としては、奥行き30㎝程度の物を選ぶと良い(これは31cm)。天板はボルト止めなので、各段の高さは任意に決めれる。天板強度も横幅61cmあたり、1枚50kgあるので書籍用としても問題ない。キャスター等も付属で搭載可能。


    





3-3.結局、業務用スチールラック、スチール本棚になるよね

  1. 多少のデザイン性 ⇒ 色が選べる
  2. 本棚として耐え得る構造強度 ⇒ スチール・鉄構造
  3. 直ぐに分解出来、移動後再構築出来る機動性 ⇒ ボルト・ネジ止め式
  4. 本が増えた時の拡張性(追加部品の入手性) ⇒ 業務用、長く部品が手に入りやすい

こう考えて行くと、素材が「スチール・鉄」かつ分解容易の時点で、既に答えは出ており、ほとんど業務用のスチールラックか、スチール本棚に結論が落ち着く。

業務用スチールラックというのは、A4ファイルの資料等を陳列するために、よく使用される。書籍専用ではないため、ラックに壁はなく、オープンである。埃が4方向から入って来るが、これは仕方ない。壁に付け、なるべく縦方向を書籍の高さと同等に調整することである程度防ぐ。ただ、図書館や図書室でも、業務用スチールラックで陳列している所もあるのだから、プロ仕様とも言えなくもない。

一方で、業務用であると、1段毎の耐久重量が120kg、300kg等、耐荷重スペックが非常に高く、かなりのオーバースペックであるが、その分しっかりとしている。また、本専用だけで使用しない場合(物品のディスプレイ等にも合わせて使用の場合)やカスタマイズする場合は、業務用スチールラックの方が良いだろう。

横幅は、それぞれの部屋に合わせた幅があると思うが、奥行きについては、書籍用としては「奥行き30cm」が理想である。縦方向はフレキシブルに、ボルト・ネジ止めで天板高さを調整出来るので、あとは、高密度収納のために、天板を買い足して、入れて行けば良い。なお、追加部品として天板が別途買えない様な場合は、同じ製品を2つ買って、天板だけ部品どりということで抜き取る手法もある。







  

業務用軽量スチールラックの奥行き D300mmの製品群例



スチール本棚も選択肢ではあるが、部品の入手性や拡張性が不透明である。また、横揺れ等の耐久性を高く保ちたい場合は(細くて長いスチール製本棚は、ぐらんぐらん横に揺れる場合がある)、業務用スチールラックをお勧めする。なお、地震が来た時も、細いスチール本棚よりも、先に述べた業務用スチールラックの方が耐久性が高いと考える。

下記に紹介するのは、1枚当たりの天板の耐荷重が15kgの物である。業務用(120kg,300kg)に比べて1/10、汎用スチールラック(50kg等)に比べて1/3と劣り耐久性が心配であるが、書籍専用ということで奥行きが260mm等、コンパクトにはまとまる点は良い。




  

奥行きD260mmのスチール本棚の製品群例





3-4.スチール書架 プロ用(ただし分解移動が容易かは不明)


図書館等に納入されているスチール書架として下記の様なものもある。基本的にスチールで作られているので、分解可能だが、それが容易かどうかは不明である。

ただし、この様な書架は、部屋の中央に置くことを想定しているため、引っ越し頻度が多い人がこれだけの部屋のスペースを確保できるかは疑問である。壁に寄せるタイプの本棚を基本とすべきであろう。








4.その他の選択肢


スチールで出来た分解可能本棚が、本棚機動においては最強という結論は出たが、分解出来、移動可能な本棚として、下記の様な選択肢もある。


4-1.スチール支柱+合板の天板タイプの本棚


天板は合板を許容するという人の場合は、よりデザインが良い本棚を選ぶことが出来る。例えば、下記は、スチール支柱+合板の天板タイプであるが、全てばらして解体出来るので、移動は容易である。





 

ニトリで2015年頃は、3万円近くで売っていた商品。OEM製造なのか、現在2019年現在は「ワイエムワールドラック5段」という製品に名前を変えて、Amazonで約半額となっている。

最大の特徴は、天板が支柱を貫くオープンタイプのシェルフなので、2つの本棚を購入すると、支柱同士を連結運用可能なことである。(仮想的な3列式になる)






5.まとめ


引っ越しを頻繁に行う人の本棚、機動性のある本棚として、容易に分解出来、追加部品が入手可能、耐久性を備える観点から、材質がスチールの業務用スチールラック、スチール本棚が最適解であることを提案した。

毎回本棚を引っ越しの度に持って行けるということは、固定式の書棚を常に設置している居住空間・スペースを確保できる家庭においても、部屋の模様替えで容易に移動できるメリットを持っている。

加えて、合板・木製の本棚よりも耐久性が高く(業務用スチールラックでは、一枚天板辺り、120kg、300kgの耐荷重性等)数十年単位で使用できると見込まれることから、この様な機動性のある本棚も購入の選択肢の一つになると考える。




References
[1] HEISHIN THE ENGINEER'S BOOK Vol. 19
      http://ebw.eng-book.com/heishin/vfs/calculation/DiskMaximumStressAndDeflection/
[2] Amazon, https://www.amazon.co.jp/
[3] 金属のヤング率の一覧|金属材料の剛性の比較する一覧表,
      https://www.toishi.info/metal/young_list.html
[4] https://idearoom.me/stealrack_joyfulhonda/
[5] http://matome.naver.jp/odai/2133312059597678501

2019年8月12日月曜日

SpaceX Falcon9 ファルコン9 ロケット システム設計 (第3回目) ファルコンヘビー, Falcon9 Rocket System Design(3) and Falcon Heavy

SpaceX Falcon9 ファルコン9 ロケット システム設計 (第3回目) ファルコンヘビー,
Falcon9 Rocket System Design(3) and Falcon Heavy





Falcon9 ロケットは、SpaceXが開発した大型の軌道投入用ロケットである。
この記事では、Falcon9のシステム設計の概要について、

SpaceX Falcon9 ファルコン9 ロケット システム設計 (第1回目), Falcon9 Rocket System Design(1)
SpaceX Falcon9 ファルコン9 ロケット システム設計 (第2回目), Falcon9 Rocket System Design(2)

に引き続き解説する。「高信頼性」を軸に、合理的に設計した汎用大型ロケットがFalcon9ロケットである。今回は、Falcon Heavy等についても触れる。



【関連記事】
SpaceX Falcon1 ファルコン1 ロケット システム設計 (第1回目), Falcon1 Rocket System Design(1)
SpaceX Falcon1 ファルコン1 ロケット システム設計 (第2回目), Falcon1 Rocket System Design(2)



      




1. Falcon Heavy



Falcon Heavyの打ち上げ(2018年2月6日)


Falcon9の増強版である、Falcon Heavyは、2段式のブースタ付き大型ロケットである。ロケット構成としては、コアブースターとほぼ同等の2本のブースターを両脇に抱えている構成となっている。FHWは、信頼と実績のあるFalcon9の設計に基づき開発・製造された。

Falcon Heavyは、打ち上げ時に約2313トン(510万lbf)以上の推力を発生し、2019年現在世界で最も強力な打ち上げロケットである。歴史上、実用化された米国最大のロケットは、アポロを月面に送ったサターンVロケットであるが、サターンVの推力が3465トンであることから、推力規模は7割~6割程度である。

両脇のブースター込みで、3つのFalcon9 第1段目を束ねた設計であり、中心のコアロケットの第1段目ロケットエンジンは、機能が強化されている。第2段目以降については、Falcon9と同じものを利用している。

機体の規模や状態が異なれば、空力的な負荷が多少異なるにも関わらず、フェアリング等も同じである。これにより、Falcon Heavyは、最大限Falcon9の資産を活用できるように互換性を有した設計がなされている。この共通性により、製造や運用インフラの変更を最小限に抑えている。

2018年2月6日、ケネディー宇宙センターから最初のFalcon Heavyが打ち上げられた。
SpaceXは第1段目は、2つのサイドブースターがそれに該当するとみなしている。(仮想的な3段式ロケット、コアロケットが2段式(地上から点火するが)とみなす)各コアに、それぞれ9個のMerlin1Dロケットエンジンが搭載されている。



Falcon Heavyのエンジン配列(下から見上げた図)


サイドブースター、コアブースター合わせて合計27個搭載された、Merlin1D ロケットエンジンは、それぞれ約86.2トン(19万lbf)の推力を発生し、合計約2313トン(510万lbf)の推力を発生する。2つのサイドブースターは、中心のコアブースターにベースエンジンマウントとLOXタンクの前端の2か所で接続されている。

第1段目の各ブースタに9個のエンジンを搭載しているFalcon Heavyは、他の大型打ち上げロケットシステムと異なり、冗長性を備えている。ロケット上昇中、各エンジンは個別に監視され、異常が発生した場合、必要な場合には、最小噴射成功基準が残りのロケットエンジンで達成可能という条件において、エンジンをシャットダウンする。(異常なエンジンを停止させ、長く燃やせばミッションを実現可能と計算された場合において実施)このエンジン停止能力により、信頼性を持っており、これを実現するために第1段目の冗長性を確保している。

Falcon9の第1回目でも説明したが、Falcon Heavyでもエンジン停止能力を備えたEELV (EnvoIved Expendable Launch Vehicle) クラスのシステムを提供している。



Falcon Heavyの打ち上げと帰還概要図





2. Falcon9 / Falcon Heavyの投入可能軌道と射場

Falcon9とFalcon Heavyを利用することで、中規模及び大型の発射能力の全てをSpaceXは顧客に提供可能となっている。ケープカナペラル空軍基地、ケネディ宇宙センター、Vandenberg空軍基地において、Falcon打ち上げ施設を運営している。

低軌道(LEO)、静止軌道(GSO)、深宇宙の惑星探査まで、幅広い広範囲の傾斜、高度に対応している。将来的には、テキサス州南部で開発中の商業軌道発射施設からも飛行を予定している。下記に代表的な打ち上げ軌道を示す。射場により対応可能な範囲が異なるため、上記の射場を確保している。今後、射場が追加されるに従い、対応出来るバリエーションが増える。


◆低軌道(LEO)
 傾斜角範囲:28.5~51.6°
 対応機種:Falcon9 / Falcon Heavy
 射場:米国東側射場


◆極LEO、太陽同期軌道(SSO)
 傾斜角範囲:66~145°
 対応機種:Falcon9
 射場:Vandenberg空軍基地


◆静止トランスファー軌道(GTO)
 傾斜角範囲:上限28.5°まで
 対応機種:Falcon9 / Falcon Heavy
 射場:東側射場


◆静止軌道(GSO)
 傾斜角範囲:上限28.5°まで
 対応機種:Falcon Heavy
 射場:東側射場


◆地球脱出軌道
 傾斜角範囲:N/A
 対応機種:Falcon9 / Falcon Heavy
 射場:東側射場

 
Falcon9 / Falcon Heavyは、軌道への2回噴射投入、または直接投入を提供することが可能である。2回噴射投入はロケット能力を最適化するが、直接投入はミッション期間を短縮して、2段目エンジンの燃焼は1回のみで済む。

51.6°以下の傾斜のLEOミッションは、東側射場からの打ち上げになる。それ以上高い傾斜への投入は、Vandenberg空軍基地を使用することとなる。28.5°以下の傾斜角では、東側射場から発射可能であるが、この条件は打ち上げ能力低下を引き起こす。

様々な静止軌道投入やその他の高い軌道への投入が可能である。GTOにおいては、近地点高度185kmを基準としている。より高く近地点高度を設定した場合は、ロケット打ち上げ能力の低下を招く可能性があるからである。現在全てのGTOミッションは、東側射場から打ち上げている。

直接静止軌道投入の打ち上げは、Falcon Heavyにて、ケネディー宇宙センターから打ち上げ可能である。衛星は直接円軌道に投入される、あるいは正しい軌道位置に段階的に遷移することができるGSO下に投入可能である。

地球脱出軌道への打ち上げも可能であり、高い脱出エネルギー速度を確保するため、顧客が用意したキックステージを利用することが可能である。




3. Falcon9 / Falcon Heavyの衛星分離姿勢と精度

SpaceXは、標準サービスとして、3軸姿勢制御、スピン安定分離のサービスを提供している。慣性分離のために第2段とペイロードを必要なlocal vertical/local horizontal (LVLH)姿勢に向けることが出来、姿勢変化率を最小化可能である。

スピン安定分離では、F9は第2段とペイロードを必要なlocal vertical/local horizontal (LVLH)姿勢に向けて、顧客から指定されたスピンをロケットのX軸に対して与えることができる。ペイロードの質量特性に依存するが、最大30°/sまで調整が可能である。これらは全て標準サービスとして付属している。




4. 複数の衛星・ペイロード投入

Falcon9 / Falcon Heavyは、単一ミッションにおいて、複数の衛星を分離することが出来る。第2段目は再点火可能であり、各衛星を異なる軌道に展開する柔軟性を備えている。

マルチペイロードシステム、デュアルペイロードアタッチメントフィッティング、ミッションユニークアダプター等、幅広い分離システムに対応している。非標準サービスではあるが、サードパーティーシステムを使用できるように、それらのアダプター及びディスペンサーを開発や提供を追加料金で支援可能である。

また、衛星と非干渉の条件下おいて、SpaceXは2次ペイロードを投資する権利を持っている。これには、様々な種類のコンポーネントが含まれており、SpaceXの技術開発を後押ししている。




5. 衛星・ペイロードの環境

Falcon9 / Falcon Heavyは、全段液体推進、単一の第2段目ステージ分離、推力がスロットリング可能なロケットエンジン、窒素ガス式分離システムを使用することで、可能な限り衛星・ペイロード環境を良くするように設計されている。負荷をかけない方式を追及している。

第1段目、第2段目のロケットエンジンは、ピントル型インジェクターを搭載した可変推力エンジンなので、推力を容易にスロットリングすることができる。(第1段目は着陸可能な規模でスロットリング可能)そのため、ロケットとペイロードのの加速限界を維持するために、スロットリング可能である。これにより、きめ細かい加速度対応が可能となる。

Falcon9 / Falcon Heavyは、単に再利用出来るだけではない。衛星やISS等に運ぶ人員に対してかかる負荷(加速度)のきめ細かい制御を行う事が出来るのだ。これは、ロケットエンジンが共通の技術で製造されているため、第1段目、第2段目を問わない。

温度、湿度、清純度環境においては、SpXは、ISOクラス7(クラス10000)のクリーンルームを保有している。打ち上げ前に清浄化された空気は、環境温度として常に供給空気の露点以上に維持して供給されている。窒素パージも非標準サービスだが利用可能である。ペイロード取り付け治具(PAF)とフェアリング表面は、洗浄されることで、レベルとしてA/5とA/2の間で維持される。残留レベルの微粒子は、300~500μm程度であり、IEST-STD-CC1246Dを基準とした環境を用意出来る。





6. Falcon9 / Falcon Heavyの打ち上げウインドウ

Falcon9 / Falcon Heavyは、年内における任意の日、1日中任意の時間に打ち上げることが可能である。しかしながら、環境の制限の制約と準備状況には左右される。

打ち上げウインドウ時間は、各ミッション毎に特別に設定される。4時間を超えるようなものや、1時間未満の打ち上げウインドウは、SpaceXが提供する標準サービスではなく、別途追加料金が必要である。

顧客は、Falcon9やFalcon Heavyの第1段目がリカバリーして帰ってくるという他にはない仕様のために、打ち上げウインドウ内の打ち上げ機会を最大化可能である。これは、1段目の不確定な海上への落下がなく(ブースターは陸上戻って来て着陸、また海上でも回収船の上にピンポイントで着陸可能)、仮に海上へ落下させるにしても、どこの地点に落下させるか任意に設定できることも関係しているだろう。




H-2A 37号機の制限水域例

通常、宇宙ロケットはミッション終了後、軌道に乗らないものは自由落下するため、この様に広範囲に制限水域を設けた水路通報を出すのが通例である。落下地点は任意とならない。しかしながら、ピンポイントでフライバックするなら、この様な広大な制限水域は必要ない。



カウントダウンは、1時間前から開始が標準的である。ただし顧客に応じて、6時間前からカウントダウン延長もあり得る。カウントダウンの早い段階においてLOX、RP-1充填及び加圧負荷を実行し、推進系のチェックを実施する。

サポートはT-6分で取り外される。カウントダウンは全て自動で実施される。油圧クランプにて地上にロケット拘束されているが、推進系のチェックをHold on padオペレーションによって行うため、発射前に全出力が出た段階で最終チェックを行う。ノミナル値を確認すればT-0秒で油圧クランプが解放される。ノミナル値ではない場合、安全にエンジンはシャットダウンされる。



      



References
[1] Falcon9 Launch Vehicle Payload User’s Guide Rev1
      https://www.spaceflightnow.com/falcon9/001/f9guide.pdf
[2] FALCON USER’S GUIDE JANUARY 2019
      https://www.spacex.com/sites/spacex/files/falcon_users_guide.pdf
[3] H-2Aロケット37号機 水路通報資料

2019年8月10日土曜日

SpaceX Falcon9 ファルコン9 ロケット システム設計 (第2回目), Falcon9 Rocket System Design(2)

SpaceX Falcon9 ファルコン9 ロケット システム設計 (第2回目),
Falcon9 Rocket System Design(2)






Falcon9 ロケットは、SpaceXが開発した大型の軌道投入用ロケットである。
この記事では、Falcon9のシステム設計の概要について、

SpaceX Falcon9 ファルコン9 ロケット システム設計 (第1回目), Falcon9 Rocket System Design(1)

に引き続き解説する。「高信頼性」を軸に、合理的に設計した汎用大型ロケットがFalcon9ロケットである。




【関連記事】
SpaceX Falcon1 ファルコン1 ロケット システム設計 (第1回目), Falcon1 Rocket System Design(1)
SpaceX Falcon1 ファルコン1 ロケット システム設計 (第2回目), Falcon1 Rocket System Design(2)



      




1. Falcon9のアビオニクス


Falcon9の誘導制御、ナビゲーション、制御システム(GNC)では、フォールトトレントアーキテクチャーを採用しており、最新の民生コンピュータ技術とネットワーキング技術を使用して、Falcon9の性能と信頼性を向上させている。フォールトトレランスは、アビオニクスボックス内の区画分離または特定のコンポーネントを3重系統にして使用している。これは、Falcon9が、人員をISSに運搬するという目的に基づいて設計されているからであり、信頼性を高く作っている。

アビオニクスとして、フライトコンピュータ、GPS受信機、INS、機体制御コントローラ(推進、バルブ、加圧、分離及びペイロードインターフェイス制御)、ネットワークバックボーン等があるが、これらはSpaceXが独自に設計している。

安全にロケットを追跡するために、Sバンド送信機、Cバンドトランスポンダーを搭載している。Sバンド送信機は、第2段ステージ分離後に、第1段目と第2段目の両方からのテレメトリーと映像を地上に送信するために使用する。

電気的インターフェイスの複雑さを最小限に抑えるために、ロケットの第1段目、第2段目の両方で、複数の冗長化されたリチウムイオン電池を搭載している。つまり、これは限られたラインのみからの電源供給ではなく、バッテリーを介した電源系統をロケット内部に、分散して複数保有している。このことから、Falcon9の電源系統のバックアップは、複数あるものと考えられる。

ロケット機体には、故障時に被害を最小限にするための、飛行中断システムが装備されている。これは、レンジミッションフライトコントロールオフィサーによって直接指示される以外では、早すぎるステージ分離等、ロケットの誤動作等でミッション条件を逸脱した場合、自立的にフライトを中止する。この様に、高度に自動化されている。




2. Falcon9のロケット各段のアーキテクチャーと設計


Falcon9は、2段式ロケットである。これは分離による失敗可能性を最小限に抑えるために、この構成が採用された。点火不良や機械部分の故障等の分離失敗を避けるため、第3段、第4段は追加されていない。

Falcon Heavyについても、Falcon9と同様の構成を採用しているが、両サイドに2つのブースターが追加されている。これについては、仮想的な第1段ロケット、第1.5段ロケットと見なすことも出来る。

しかしながら、ソ連・ロシアのR7ロケットやソユーズロケットと同様に、地上での点火の確認が行えるため、打ちあがった後での点火失敗による失敗は排除出来る。Falcon9とFalcon Heavyは、加えて第1回目に書いた様に、Hold on padオペレーションを実行することが出来るため、これらの追加があっても、ロケットエンジンの健全性は地上で確認できる。このため、この状態であっても、追加されるのは第2段目の分離及び点火リスクのみである。

Falcon9の第2段の開放・分離システムは、「窒素ガス圧式押し出し式装置」を使用しており、比較的長いストロークによって低衝撃かつ信頼性の高い確実なリリースと分離が可能となる。

また、Falcon Heavyも窒素ガス圧式装置によってブースターを分離する機構である。これは、爆発ボルトを使ってSRBを分離する日本のH-2A等とは対照的である。




H-2Aの分離機構(H15にSRB分離に失敗したH-2A 6号機の報告書より抜粋)


Falconシリーズが採用した、窒素ガス圧式分離装置は、従来の火工品ペースの分離システムでは不可能であった、「実際に使用するフライトハードウェアへの事前の機能試験」を実施する事が可能となった。

これは。火工品ベースの分離システムは、一度使用すると火薬を燃焼させて作動させるため、再利用不可能だが、窒素ガス式の分離システムでは、ガス圧を再度かける事によって繰り返し試験が可能だからである。

第1回目に、ロケットエンジンの健全性を確麗して発射台からリリースする事に触れたが、液体燃料ロケットと固体燃料ロケットの様な対比がここにもある。各Falconロケットシリーズの打ち上げについて、SpaceXは、コンポーネントからシステムレペルまでの一連の徹底的な事前試験を地上で事前に実施している。これが、高い信頼性と成功率の裏付けとなっている。

窒素ガス式の分離システムや液体ロケットエンジンに代表される様に、打上げ前に事前試験が可能な構成品をシステムとして積極的に採用している。




3. Falcon9の構造


第1段目ロケットの推進剤タンク壁は、アルミリチウム合金で作られている。タンクは摩擦撹祥溶接を使用して製造する。これは実用化されている中で最高強度を保ち、信頼性の高い溶接手法だからである。

第1段目は共通ドームがLOXとRP-1タンクを分離しており、内部には、断熱されたトランスファーチューブが通っている。これは、酸化剤であるLOXをロケットエンジンに供給するために、RP-1タンク中心を通り、ロケットエンジン部に導く。

第1段目と第2段目を接続している中間段は、複合材で製造されており、アルミのハニカムコアを炭素繊維の表面シートで覆っているものとなっている。

中間段は第1段目のタンク前端に固定されている。ステージ分離システムは、ステージ間の前端に位置し、2段目とのインターフェイスとなっている。第2段目は第1段目の短縮版であり、第1段目タンクと同じ材料、構造、治具、道具そして製造技術の大部分が同じである。これにより、低コスト化と合理化を図っている。

第2段目には、Merlin Vaccum エンジンが搭載されている。これは、165:1の膨張ノズルを持ったロケットエンジンで、再着火の信頼性を高めるために、エンジンには、「2重冗長」のトリエチルアルミニウムートリエチルボラン(TEA-TEB)自己着火剤が含まれている。2重冗長にしているのは、有人ミッションに対応させるためであろう。

これに加えて、第2段目には、窒素ガス(GN2)のコールドガス式姿勢制御システム(ACS)が搭載されている。これは、ポインティングとロール制御のためである。窒素ガススラスターはヒドラジンの様な有毒な推進剤ベースの姿勢制御システムよりも、信頼性が高く、化学的汚染がない。

第1段目には、複数のMerlinロケットエンジンが搭載されているため、それぞれのエンジンをジンバルさせることで、エンジン単体では出来ないロール制御も可能となる。しかしながら、第2段目は1台しかエンジンが搭載されてないため、ロール制御は、窒素ガススラスターによって賄っている。




4. Falcon9のステージ分離システム


第1段目と第2段目は、中間段の頭頂部と第2段目の燃料タンク底部との間に3か所でメカニカルラッチによって、固定・結合されている。第1段目エンジン停止後、高圧ヘリウムを用いたガス式の冗長性を持つアクチュエータを介して、ラッチを開放する。

ヘリウム加圧システムは、他にも4つの窒素ガス式押出し分離装置を与圧し、ラッチ解放後に、ステージ分離のための力を加える。これは、当初のFalcon9では、3つであったため、最新版のFalcon9にて、1個追加されて改良がなされた可能性が高い。

信頼性を高めるため、第1段目の中央に取り付けられた冗長のプッシャーは、分離後のステージ間衝突確率を劇的に減少させるように設計されている。これは、ロケット分離時には、まだ第1段目の推力が残っている場合があり、中途半端な押し出しでは、第1段目の推力が効いて、第2段目点火前にぶつかる可能性があるからである。

Falcon Heavyの場合、サイドブースターは2か所にてセンターコアに固定されている。2つの窒素ガス分離機構(ステージ分離機構の別バージョン)が各サイドブースタの2か所に一しており、上昇中は固定を維持するが、サイドブースターが燃焼終了後に、サイドブースターを切り離す。

更にもう2つの窒素ガス押出し分離機構が各サイドコアの後端部に設置されていて、サイドコア燃焼終了後、横方向に押し出すために使用される。





5. Falcon9のフェアリング分離システム


フェアリングについても、窒素ガス分離式である。これにより、実機の地上試験を複数回実施できる。(例えば、H-2Aは加工品を使用した方式で、1回しか使用できない)半分に分かれた2つのフェアリングは、フェアリング垂直の継ぎ目に沿って、メカニカルラッチで固定される。

フェアリング展開のために、高圧ヘリウム配管がラッチを開放し、4つの窒素ガス圧式押出し装置が2つのフェアリングの確実に展開する。窒素ガス圧式押し出し装置は、良好な衝撃環境が提供する一方、分離システムハードウェアを使用した事前試験が実施可能である。また、分離時に生じるデブリは最小限に抑えられる。




6. 事前の環境試験


ロケットエンジンについては、もちろん地上燃焼試験を実施しているが、プラスマージンを取った試験を実施している。つまり、極限環境でのテストを実施している。

Falcon1と同様に、Falcon9の第1段目は、大気圏再突入に耐えうる様に設計されている。実際に、地上に垂直着陸で戻ってきた動画は最近ではよく見られるが、これは、ロケット上昇時の耐久性と、再突入後のリカバリーの負荷両方の試験を実施している。

通常の状態に加えて、より厳しい側での試験、例えば、部品の幾何学的な位置合わせの不良、異常なタイミングにおけるシーケンス分離試験も実施されている。




7. 短期間での開発、高い製品品質、信頼性、均一性の実現


これまで通常のロケットは、再使用を前提とされていなかったが、再使用を前提としてFalconシリーズは設計されており、Falcon9や、Falcon Heavyは、第1段目、ブースターはフライバックして戻って来る様に設計されている。

これにより、他の企業とは異なる独特の機会をSpaceXは得ている。というのも、回収したロケット機体を基にして、ロケットシステム継続的に改善することが可能であるからだ。戻ってきた機体を調査し、設計と材料選択を継続的に評価可能である。ここに、SpaceXの強みがある。

クラスタリングさせた大量のロケットエンジン、有人飛行のために複数の冗長系を備えたアビオニクス等は、ロケット1機を製造するだけでも、ロケットに搭載する製品は複数生産しなければならない。これを継続することで、ロケットに搭載する製品を大量生産する結果、高い製品品質と均一性を実現出来る。

一方では、テレメータデータのみならず、ロケット実機が戻って来ることで、問題なく作動出来てたかどうかを実機で確認して知見を得れる。これらを常に開発にフィードバックさせることで、更に高い製品品質、信頼性、均一性の実現が可能となり、短期間の内にそれらを取得することが可能となる。




8. Falcon9の価格


標準価格を褐戦するという、以前の衛星打上げ会社にはない方針を取っている。価格設定には、射場サービス、標準ペイロード統合サービス、第三者賠償責任保険が含まれている。特注の非標準サービスも利用可能である。



(続く)


      



References
[1] Falcon9 Launch Vehicle Payload User’s Guide Rev1
      https://www.spaceflightnow.com/falcon9/001/f9guide.pdf
[2] FALCON USER’S GUIDE JANUARY 2019
      https://www.spacex.com/sites/spacex/files/falcon_users_guide.pdf
[3] 平成15年度| 第4章 特定検査対象に関する検査状況 第17 H—IIAロケットの開発等について
[4] H-2Aロケット6号機打上げ失敗, http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0011026.html