2018年5月11日金曜日

ソ連・ロシアの宇宙ロケット・ミサイルの進化図, Soviet and Russia space rocket evolution map

ソ連・ロシアの宇宙ロケット・ミサイルの進化図, Soviet and Russia space rocket and missile evolution map





前回からの続きです
◆米国の宇宙ロケット進化図とロケットダイン、エアロジェット, 
 US space rocket evolution map with Rocketdyne and Aerojet



ソ連の本格的な大型液体燃料ロケット開発も、米国と同様に、ナチスドイツが開発したV-2ロケットを鹵獲し、本国に持ち帰りリバースエンジニアリングからスタートしている。




ソ連・ロシアの宇宙ロケット・ミサイル進化図



ソ連・ロシアの大型液体燃料ロケット、ミサイルの特徴として、現役寿命が長い事が挙げられる。R-7系列のソユーズロケットは、現在も現役である。スカッドミサイルとして知られるR-17も、第三世界に拡散した結果ではあるが、コピー品が出回り中東や北朝鮮において、今でも第一線で使用され続けている。本国ロシアでも、改良化されたスカッドDは現役である。

これは、どんどん新しい大型液体燃料ロケットを開発、更新した米国とは対照的である。ソ連には「量も質のうち」という思想があり、性能よりも量産出来る製造性を優先する事も多々あった。この辺りの事情が、ロケットの現役寿命が長い事と関連があると考えられる。

この半世紀、ロケットの推進系、推進剤は大きく変わっていない。昔も今も性能的には、大きな差がなく、それならば昔の物を改良し使い続けても、問題ないにはならない。


大型宇宙ロケットとして、ミサイルが転用される進化を遂げた系列では、V-2をリバースエンジニアリングした、R-1ミサイル。それを2段式にして、ソ連の独自色を初めて組み込んだR-2ミサイルから始まり、R-5を経て、現在も改良版が「ソユーズロケット」として使用されているR-7ミサイルに行きつくことになる。

OKB-456 グルシュコ設計局(現 NPO Energomash)が手がけたロケットエンジンは種類も数も多い。ソユーズ系列のRD-107、RD-108ロケットエンジンは、言うまでもない程有名だろう。

R-36ミサイルのRD-250ロケットエンジンシリーズ、R-12のRD-214、プロトンロケットのRD-253等、各種常温推進剤の大型ミサイル第1段目のロケットエンジン開発を手掛けている。

ここの進化図において、R-5から、R-7等のソユーズ系列や常温推進剤ICBM、IRBMシリーズの分岐があるのは、第1段目に、OKB-456が設計したロケットエンジンを搭載しているからであると考えられる。

ただし、N1ロケットがソユーズの先に位置しており(第1段目エンジンは、NK-15で、クズネツォフ設計局が担当)、こちらは機体側の整理として、OKB-1 コロリョフ設計局が手がけている関係上、この様な表記になっており、ロケット機体とエンジンの関係が交じり合っている。

OKB-456は、冷戦後期に、大型ミサイルではなく、純粋な宇宙ロケットとして開発されたZenitロケットシリーズや、スペースシャトルブランに搭載されている、RD-170シリーズ開発を行った。純粋に第1段目のロケットエンジンのみで進化系統図を書き記すのであれば、この先に米国のAtlas Vロケット(RD-180搭載)が、位置するだろう。



大型固体燃料ロケット方式のミサイルとしては、RT-1が最初である。実験用固体推進ロケット(Raketa Tverdotoplivnaya)と名付けられたこのミサイルは、OKB-1によって開発され、ソ連の固体燃料ロケットの始祖となった。ミサイルとしては装備化されなかったが、RT-2以降の開発計画に技術がつながっている。現在、移動式発射型ICBMとして有名な、RT-2PM2 Topol-Mの先祖が、RT-1である。



一方で、ICBMの様な大型・長距離ミサイルはなく、戦後早い段階で実現していた常温推進剤を用いた中距離、短距離ミサイルは、ナチスドイツのWasserfall 地対空ミサイルが基になっている。これは、米国の常温推進剤ロケット、ミサイルが、米陸軍及びJPLが開発した国産のCorporalが基になっているのとは対称的である。

ソ連に技術が無かったわけではなく、グルシュコやイサエフ等のロシア人ロケットエンジン技術者は、ドイツの技術鹵獲前の戦時中から既に硝酸/ケロシンを推進剤とするRD-1 ロケットエンジンを開発していた。

しかし、これらは純粋なロケットやミサイル用途ではなく、ロケット戦闘機用であった。また、RD-1は推力1.4トンに対して、Wasserfallのエンジンは、推力 約8トンと、5~6倍の推力差(=技術差)があった。このため、進化系統図としては、Wasserfallミサイルが、ソ連・ロシアの常温保存推進剤ミサイル・ロケットの始祖として位置するのだろう。

Wasserfallミサイルは、V-2ロケットの小型地対空ミサイル版として開発され、基礎設計を共有している。しかし、V-2の推進剤が、液体酸素/エタノールであったのに対して、より即応性が高く実戦的な、常温保存推進剤を使用している。具体的には、硝酸/ケロシンを用いており、インジェクターについても、V-2よりも簡略化されたプレート型のインジェクターを用いていた。

Wasserfallは、最高で1か月間、推進剤を充填したままで、発射準備状態で待機可能であった。このミサイルの技術的に元となって開発されたのが、かの有名なR-11(スカッドA ミサイル)とR-17(スカッドB ミサイル)である。(現在、「スカッドミサイル」というと、R-17のスカッドBの事を指すのが一般的である)

V-2は短距離弾道ミサイルであったが、スカッドミサイルは、陸上部隊が運用する、最小戦力の核戦力として再発明された。ソ連が最初に配備した、SLBMについても、R-11 スカッドAを基にしたR-11FMが基になっている。そして、R-11から始まり、R-27等のSLBM系列に至る常温推進剤を用いたミサイルのロケットエンジンの開発は、OKB-2イサエフ設計局が手がけた。





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