米国の宇宙ロケット進化図とロケットダイン、エアロジェット,
US space rocket evolution map with Rocketdyne and Aerojet
おおよそ全世界のほとんどの宇宙ロケットは、V-2ロケット(A-4ミサイル)を始祖として発展してきた。
これは、第二次世界大戦中及び終結時に、化学工業の発展が進んでおらず、宇宙へ打ち上げるための大型ロケットとしては、液体燃料ロケット方式しか、実質的に選択肢がなかった。(大型の固体燃料ロケットは、その後の化学工業の発展により実現した)そして、液体燃料ロケットの分野ではナチスドイツが当時、他国よりも約20年技術的に進んでいた。
ナチスドイツが開発したV-2ロケットは、米国とソ連によって鹵獲され、それぞれの本国に持ち去られた。米国はペーパークリップ作戦で、ドイツ人ロケット技術者を確保し、V-2計画の中心人物であった、フォン・ブラウン博士を含めたロケット技術者を本国に移送した。
一方のソ連も、米軍が去った後に、残っていた技術者を確保して、本国に連れ去った。
ここから、冷戦時の宇宙開発競争がスタートする。以下の図は、米国の宇宙ロケット進化図である。
米国の宇宙ロケット進化図
米国の宇宙ロケットのほとんどが、V-2ロケットを起点にしていることが分かる。V-2以前に米国独自で開発していたロケットとしては、MGM-5 Corporalミサイルがある。
これは、米陸軍がカリフォルニア工科大学ジェット推進研究所(JPL)と共同で開発を行っていた、核弾頭搭載の短距離弾道ミサイルである。米国で初めて正式採用された核弾頭搭載ミサイルであった。
Corporalミサイルは、JPLの面々が起業した、Aerojet社のロケットエンジンを搭載していた。気象観測用ロケットとして有名な、RTV-G-1 WAC Corporalは、ここから派生したプロジェクトである。
Corporal系列のAerobee気象観測ロケットも、Aerojet社のエンジンを搭載し、そのロケットエンジンは、地対空ミサイルNike Ajaxとも、ほぼ共通の設計仕様となっていた。
Corporalから続く、一連のロケットとミサイルは、軍事用途として使用することが前提にあったため、赤煙硝酸 (RFNA)を酸化剤とする常温貯蔵可能な燃料を用いている。これらの系列、そして続くVanguard等が、純米国製の宇宙ロケットプロジェクトと言える。
一方、V-2から派生したPGM-11 Redstone 短距離弾道ミサイルは、V-2の影響を強く受けている。米陸軍弾道ミサイル局で開発されたこのミサイルは、フォン・ブラウン博士の式の元で開発された弾道ミサイルであり、そのロケットエンジンNAA 75-110は、V-2と同じく、液体酸素/エタノール(アルコール)を推進剤としていた。
このロケットエンジンを製造を手掛けた航空メーカーであるNorth Americanのロケットエンジン部門は、後にRocketdyne社となる。
また、SM-64 Navaho 大陸間巡航ミサイルについては、そのブースターに、XLR83-NA-1 ロケットエンジンを搭載しており、これも「NA」ナンバーが示す様に、North American、つまり後のRocketdyne社が手がけた。
米国の2大ロケットエンジンメーカーの生い立ちは(2018年現在既に合併してAerojet Rocketdyneとなっているが)、この様なロケット進化図に関わっている。
固体燃料ロケットの走りは、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)のPolarisミサイルが始まりである。この系統図では、同じ地対地ミサイルとして、Navahoから発展したと書かれてあるが、液体燃料、固体燃料の違いがあるため、実質的には、固体燃料ロケットは、Polarisを最初の原点としている。Polarisの第1段ロケットモータは、Aerojet社やHercules 社(現Orbital ATK)手がけている。
ここから、ICBMのMinutemanシリーズや、タイタンロケット、スペースシャトルのブースターにつながる。空中発射ロケットとしては、Pegasus XLにも系譜は直結している。
今、世間で話題になっているSpaceXのFalconロケットシリーズをどこに入れるかと言うと、非常に難しい。
ロケットエンジンベースで考えれば、TRW社製のピントルインジェクター型ロケットエンジンを引き継いでいるので、Deltaロケットか、ここには入っていないアポロ月着陸船の線を引いてそこにつながる形になるのが妥当だろう。
Blue Originのロケットはどうだろうか?多分あれに使われているロケットエンジンは、元Rocketdyneか元Aerojetの技術者が一つ噛んでいるのではないかと思う。BE-4をULAが早々に次世代ロケットエンジンとして採用を決めた事から、あっ(察し)である。となると、このマップの延長上になるのかなぁ・・・?
Reference
[1] http://www.aeroflap.com.br/vergeltungswaffe-v2-o-foguete-da-vinganca/
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